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It was a gut punch 受験準備の話 [Dec. 2025]

中学3年の春の連休明けに、学校経由で申し込める外部の模擬試験があった。

公立校受験対策用の模試で、仲の良い友人も受けてみると言っているし、私も公立高校を第一志望にしていたし、そろそろ本腰を入れて受験勉強に取り組む時期でもあったので、申し込むことにした。

生まれて初めての模擬試験である。

自宅から電車で一駅のところにある専門学校が試験会場で、当日は友人と待ち合わせて一緒に行った。

日曜日に行われる外部での試験だし、服装については何の規定もなかったが、友人と申し合わせて学校の制服で参加することにした。

駅から会場に向かう道すがら、試験に参加するであろう他の学校の生徒も私たちと同じように制服を着ていて、なんだか妙に安堵したことを覚えている。

試験会場に到着し、自分の受験番号を確認しながら案内に従って指定の教室に緊張の面持ちで入室すると、学校経由で申し込んだためか、教室内には同じ中学校の見知った顔ぶればかりで、拍子抜けしてしまった。

試験は本番同様に国・数・英・社・理の順で一科目50分で進んでゆくが、本番では昼食休憩を挟むのに対し、模試は朝から5科目ぶっ続けで昼過ぎに終わる。

初めての模試ということもあり、まずは自分の自力を測るため、試験対策は特にせずに挑んだ。

注意事項の説明が終わると早速試験開始。あっという間に国・数・英が終わった。

息抜きついでに友人と教室を出て、終わった試験の分からなかったところを互いに打ち明けながら、添削半分じゃれ合い半分で緊張を解していると、他の学校の見知らぬ男子生徒が我々のところへやって来て「お前ら〇〇中学か?」と威圧的に問いかけてきた。

制服姿とはいえ、上着の前部を開け放ち、中には真っ赤なTシャツを着ていた。背は大きくないが態度はかなり大きく、髪型も当時流行りのセンターパートの茶髪で、左耳にはゴールドのピアスをしていた。

彼の問いかけてきた学校名が、まさに我々の中学だったので面食らってしまったが、こんなところで面倒は嫌だったので「いや違うけど」と素っ気なく応対し、そそくさと教室に逃げ戻って、気持ちを切り替えて残りの試験に挑んだ。

その後、試験の方は大きなミスも無く無事に終えて、むしろある程度の手応えさえ感じていたが、それ以上に試験の雰囲気に予想以上に飲まれてしまったことへの反省も感じた。

模試を終えた開放感とこれからやってくる受験という現実への不安。なんとも言えない気持ちを抱えながら教室を出ると、先程の茶髪の赤シャツと鉢合わせになってしまった。

目が合うやいなや「やっぱお前ら〇〇中だよな?」と再度問いかけてきたので、否定こそせず言いよどんでいると「俺は△△中学の▼▼っていうんだけど、お前らの中学に●●っているよな? 今度殺しに行くって伝えとけ!」と言って去っていったのである。

●●は同じ中学どころか同じクラスの友人だ。

いわゆる不良にカテゴライズされる友人で、話し合うより先に手が出てしまうので、扱いが面倒なこともよくあるが、気立ては良いので日常的によく話すし、放課後や休日に遊びに出掛けたりもしていた。

そんなこともあり、早速その一件を模試翌日の月曜日に学校で●●に伝えたところ、最初は▼▼が誰だかわからない様子だったので、外見の特徴なども細かく伝えた。

すると「▼▼ってあいつのことか! まだ馬鹿みてぇなこと言ってんだな。馬鹿なのになんで模試なんか受けてんだ? もう一発殴っとくか?」と言って、笑いながら煙草を吸いに行ってしまった。

●●が立ち去る背中に「次の授業は?」と声を掛けると「フケたって言っといて!」振り返りもせず右手を振った。

しばらくして模試の結果が送られてきた。

英語と理科が満点、それ以外の科目も9割以上の得点が取れていて、内容としてはオールA判定の申し分ない結果だったが、その直前に●●から「▼▼が二度と馬鹿なこと言わないように、思いっきりブチのめしてやっといた」と聞いていたので、心境はかなり複雑だった。

これだけ得点したにも関わらず、全国順位だと1000番台なのだという事実にも、少なからず衝撃を受けた。

その後も何度か模試を受けることになるのだが、満点を取れた模試はこの初めての模試が最初で最後である。