2009年 3月 4月 5月
3月1日(日)

冷たい雨の降る日曜日の夕暮れ、人々の喪失感を満載し、街灯の柔らかな乱反射の中を、バスは静かに進んでゆく。

日曜日の夕暮れ、世界は一度消滅する。

バスの曇った車窓から、流れてゆく街の灯りを眺めていると、何も鳴らしていないヘッドホンから、微かに旋律が聴こえたような気がした。

日曜日の夕暮れ、世界は生成を始めた。

3月2日(月)

霞のかかった朧な朝日に包まれる世界を避けるようにして、私は地下へと降りてゆく。白いマスクで顔を覆った人々が憂鬱に乱立する森を抜け、吹き溜まりのようになったプラットホームに辿り着く。いつものように電車は遅れ、私も吹き溜まりに停滞する。

私にとっての、ひと時の思惟の時間である。

しかし、世界とはことごとく自分の思い通りにはならない所だ。

いや、それが世界なのか。

3月3日(火)

仕事を終え、雪混じりの雨の中、傘もささずに歩く私の胸の内は、その天候とは裏腹に、熱く煮え滾っていた。

傘を盗まれたのだ。

私の十八番に井上陽水の「傘がない」という曲があるのだが、今日の経験によって、更に深みを増すことだろう。

皆さん、ご期待頂きたい。

3月18日(水)

バタバタとしていたら、もうそこまで春がやって来ている。

春がやってくる前に、旅に出よう。飲みかけの麦茶のグラスをそのままに、遠く南の国へ旅に出るのだ。

見ず知らずの国を、汗だくになりながら、ただ喉の渇きを潤すために彷徨う。飲みかけの麦茶のグラスを思い出しながら。

3月19日(木)

春だから。

南の国へ旅立つというのに、何の支度もしていない。

春だから。

南の国へ旅立つというのに、何の実感も湧かない。

しかし、春だから。

南の国へ旅立つのだ。懐かしき友に会うために。待っていろ!

こちらの皆さんは、しばしお別れ。

3月31日(火)

肩や腹や額の皮膚がペリペリと剥け始め、まだまだ乾燥した気候が続く中、私の身体はガサガサだが、ガサついた身体の奥底には、南の国で蓄積した太陽の輝きが、今もギラギラと燻っている。

お久しぶりです。南国帰りの真平です。

冬の季節に南国へ行って、調子に乗って身体を焼くと、乾燥肌の人は帰国した後が大変ですよ。

追々、旅の記憶をここでも紹介しましょう。お楽しみに。

4月8日(水)

バックパックを背負って世界中を歩き回るようなハードな旅をしたことがない私に、南国に住む世界旅行百戦錬磨の友人が、自らの年季の入ったチェーン付きのバックパックに、一杯の文庫本を詰めて私に持たせてくれた。

おかげで、成田に到着した私は、髭は伸び放題、日焼けをしていたせいもあり、さながら百戦錬磨のバックパッカーに仕立て上げられていたのである。

そして、そんな経緯から、私は出入国審査において、バックパックの中身を詐称してみた。「中身は衣類です」と。私の小さなバックパック体験を演出してみたかったのだ。

現在、午前4時。私は南国から密輸した文庫本を読んでいる。

私なりの浪漫である。

4月9日(木)

以前も書いたが、季節の風物の最たるものは女性であると私は思う。

真綿を散りばめたような純白の桜の花でも、町中に充満する甘く切ない茉莉の香りでも、羽衣のような柔らかで淡い装いの春の女性に敵うものは無いのではないだろうか。

そして、そんな春の風物を眺めていると、私はとてつもなくセンチメンタルジャーニーなのである。

女性とは何もかも演出してしまうのだ。

4月10日(金)

南国の夜に、私はセンチメンタルな真冬の恋をした。

お互いが好感を持っていると確信した、冬の凍える夜に、私達は破綻を向かえるのである。相手は蒼井優。

三十路を目前に、亜熱帯の南国で、私はそんな馬鹿げた夢を見たのだ。恥ずかしい限りではあるが、何とも言いがたい体験であった。

4月11日(土)

こんな事をやりたくないから、この業種を選んだのに、今更ながら「新人ビジネスマン研修」などという、宇宙で最も不毛な時空間を、ここ2週間ほど体験している。

ビジネスマナーからタスクマネージメント、5W2HからPDCAサイクルまで、ビジネスマンの基礎の基礎を徹底的に叩き込まれる自己啓発&マインドコントロール講習である。

講習内容も座学からグループ講習からゲームからテストまで多岐に渡り、普通に参加すればかなり楽しめるように練られてはいるが、残念ながら私はまだ騙されずにいる。

むしろ、日を追うごとに、周りのプリプリ新入社員の子達が、清く正しきビジネスマンに変貌してゆく姿を眺めながら、末恐ろしさすら感じている。世が世なら真っ先に死にに行くような人材のできあがりだ。

もちろん、社会に対して自分が合わせなくてはならない部分も必要だとは思うが、紋切型に合わせていくだけでは、自分自身どころか、社会が破綻するだろう。

まあ、プリプリ女子新入社員が右往左往している姿を眺められるのは良いことだが。

4月12日(日)

今日、7歳の女の子と少し話をしたのだが、正直、何を話せばよいのか分からず、たじたじになってしまった。

ただ、考えてみれば、私の周りにも7歳になる子供を抱える友人は少なくない。つまり、私にこれくらいの子供がいてもおかしくないという事なのだ。

実際に、そんな風に子供と対峙してみると、とても不思議な感じがする。

ちなみに、今の7歳女子児童において、人生ゲームやドラえもんは流行っているらしいが、ガチャピンやムックは知らないらしい。余談までに。

4月19日(日)

会計が案外安かったな、なんて喜んで、レシートを確認してみたら、麦酒の代金が請求されていなかった。

手元のレシートから顔を上げると、目の前のお姉さんが屈んでいて、おっぱいが丸見えだった。

残念ながら、今の日本において、社会に出るということは、完全なる消耗でしかないが、僅かながら見返りもあるものだ。

まあ、麦酒代に関しては今度支払いに行かなくてはなるまい。

4月20日(月)

最近、この日記の更新頻度が抜群に落ちているが、時間的余裕が無いわけではない。精神的余裕が無いのだ。

自意識の選択や行動はもちろん減るのだが、外部からの様々な知的刺激も減る中で、出力すべき物事が浮かばないのである。完全にスポイルされきってしまっている。

いけないことだ。

5月4日(月)

暫らく、此の日記を更新していなかったが、この間、私の身の周りでは様々な出来事が巻き起こり、残念ながら、もう若くも無い私は、肉体的にも精神的にも、その様々な出来事を此処に記す事が出来なかった。

若さだけの所為にするのは、些か見当違いかも知れないが、まあ、他に言い訳が見当たらない私を赦して頂きたい。

さて、その様々な出来事の話だが、所以、統率力という分野に限って御話をさせて頂くと、中々逸れが面白い話なのである。詰まりは、私が以前に御話させて戴いた「奴婢訓」という舞台に酷似する話なのである。此処最近の私の周りでは、正に「奴婢訓」のあの場面が数々演じられていたという話なのである。

つまり、人間、統率力の無い集団の中で、ある機能や、ある方向性を見定め、統率者を産みだす事は容易いのだが、ある機能や方向性の中で産み出された統率者を失った場合、かなり情けない状況に陥るのだ。

此処最近、私はそうした場面をまざまざと見せ付けられた。それが、どんなに偏向し、どんなに取り留めがなく、どんなに野蛮で、どんなに愚かしいか。そんな場面だ。

私は人間を信じる立場にいたが、その立場が揺るぎそうである。巷では色々と騒がれているが、我々は、巨大媒体がなければ、自発的には何も騒ぐべき事を見出せ無い存在にまでに、貶められているのではないか。

何が黄金週間か。

久しぶりに出鱈目御免。

5月11日(火)

まさに豪傑!

そう呻れるほどの豪傑な男共に、今まで私は幾度となく出会って来た。私自身が「豪傑」とは程遠い存在なので、ある意味でそんな男共を敬遠しつつも、密かに憧れていたのだ。

ただ、今回紹介する豪傑漢に勝る男を私は知らない。

30歳を目前にし、秀でた手腕を発揮する優秀な男で、芸術にも造詣深く、容姿も端麗。しかし、大酒飲みの大豪傑漢である。

そんな彼奴は腎炎・肝炎を既に経験し、先日、膵炎で入院した。五臓六腑も物ともしない。そんな漢を私は未だ知らない。

ただ、いくら豪傑漢でも身体を壊してはどうにもならない。私は健康な豪傑漢を見ていたいのだ。早く退院してもらいたいものだ。

5月14日(木)

久しく「ブルッた」経験をしていない。むしろ、そんな経験から程遠い生活を送る私は、過去に数々経験した戦慄を懐かしみつつも、刺激の少ない今の生活に少し安堵している部分もある。

まあ、それが歳をとるということなのだろう。

「東のエデン」

TVアニメーション。久々にある種の戦慄を感じさせてくれる作品だ。かつての戦慄を忘れた皆さんは是非見て頂きたい。

5月26日(火)

あんなことや

社会図鑑

こんなことで

NiAMaDaNMo

色々とバタバタしていたが、ようやくひと段落つきそうなところで、前歯が折れた。煎餅を食べていたら、前歯が折れたのだ。

明日、プレゼンテーションがあるのだが、前歯が折れた人間の提案など誰が聞く耳持つだろうか。

は~あぁ。生きていて良いことはあるのだろうか。

前歯。いつか生えてくるだろうか。

しかし、歯ってやつは、無くなれば無くなるほど存在感を増しやがる。

5月27日(水)

今日、定額給付金が給付されていた。

ごく庶民的な話だが、この給付金を足しにして、夏のボーナスが出たらデジタル一眼レフカメラを買おうと思っている。もちろん、私は庶民なので入門機レベルの物しか手が出せないが。

ただ、なかなか踏み出せなかったデジタル一眼レフカメラ購入という一歩を、定額給付金が後押ししてくれたとは言っても良いだろう。そういった意味では定額給付金にも一定の効果はあるのかもしれない。

ただ、ちっぽけな庶民のちっぽけな夢がひとつだけ現実になったぐらいで、残念ながら未曾有の経済危機下にある極東国家の経済がどうにかなるとは思えないと、社会人になり少し賢くなった私は切に感じるのである。

前歯の治療は3万かかるのだそうだ。は~。

5月28日(木)

今朝、NHKニュースで村上春樹が特集されていた。

珍しいこともあるものだ。

イスラエルでのエルサレム賞受賞のスピーチはもちろんだが、海外での評価や、若い世代の反応など、短いながらもなかなか面白い特集だった。

長編小説も出たことだし、久々に読んでみるか。

題名と表紙から察すると、まさかのSFか?

ちなみに、ヨーロッパの女の子と話をする際、「カワバタ」と「ミシマ」と「ムラカミ」はけっこう使えるのである。三大作家である。