2016年 4月

4月3日(日)

うちの近所には野良猫がいる。

うちの近所には野良おじさんもいる。

野良猫は欠伸をしたり糞をしたり発情したりして、基本的には日がな一日ゴロゴロしている。

野良おじさんは煙草を吸ったり酒を飲んだり痰を吐いたりして、基本的には日がな一日ウロウロしている。

そんな私は岩井俊二のスワロウテイルを見て、懐かしすぎて泣いていた。

4月10日(日)

先週、所用で某ホテルに赴いたところ、リクルートスーツの若者がゾロゾロと出てくるので、入社式でもやっていたのかと思ったら、某大学の入学式だった。

ベージュのトレンチコート。真っ黒なスーツ。真っ黒なパンプス。

皆が皆、申し合わせたように頭から爪先まで同じ格好だった。

大学の入学式って、もっと浮き足立って良いのではないだろうか。

かく言う私は、人より遅い大学入学に着て行くような素敵な服の準備もなく、お気に入りの綿パンにセーターを着て行ったのは良き思い出である。

まあしかし、閉塞感漂う世情ではありますが、皆さん賑わって行きまっしょい。

4月10日(日)

卵牛。

私が世界で一番好きな料理だ。

すき焼きのことである。

とても良質な牛肉を頂いた。卵牛にするしかないような肉である。そのためにすべての準備を整えた。

ただ、今日は人の出入りが多かった。しかし、もてなす程の肉の量はない。

日曜である。

すぐに引けると思っていた私が馬鹿だった。来訪者は呑んべいなのである。

卵牛のタイミングを逃した。

卵牛。最早、5年も口にしていないのである。

4月13日(水)

夜中、喉の乾きで変な時間に目が覚めてしまい、寝ぼけ眼で台所に水を飲みにいった。喉が潤うとなんだか煙草が欲しくなり、おもてに出て夜風と共に一服。

人心地してから寝室に戻ると部屋が赤子の匂いで充満していた。

春の夜長に新たな命を実感するのだった。

4月19日(火)

愛する娘のそばにできるだけ長くいたいので、今日の仕事を早くきりあげるにはどう段取りしたものかと、出勤時の電車内で思案していたら、向かいに立っていた女性の胸元を無意識に凝視してしまっていた。

胸元が大きく開いた春のニットを着た素敵な女性だった。

幸いなことに女性は私の視線に気付いていなかった(と思いたい)が、無意識とはいえ自らのさもしい習性には心底嫌気がさした。

でも、娘よ。待っていろ。すぐ帰るぞ!

そんなこんなもありながら、父ちゃんはいいこと思いついたんだからね!

4月22日(金)

金曜日である。

みなさん、ちゃんと、呑んで歌って踊っているだろうか?

私は家でしっぽり呑んでいる。

さて、そんなしっぽり酒のあてに夕刊をなんとなく眺めていたら、週末の封切り映画の特集に目が止まった。そう言えばここのところ映画館に行っていないなと思いつつ、記事に目を通していると、なかなか面白そうな作品が目に止まる。

「レヴェナント:蘇えりし者」

レオ様悲願の受賞作か。ふむふむ。

「緑はよみがえる」

ベルリン映画祭のやつだ。どうだろか?

「山河ノスタルジア」

前にヴェネチア獲ったジャ・ジャンクーか。期待。

「花、香る歌」

韓国のは最近重いんだよな。でも時代劇なのか。

「アイアムアヒーロー」

そ。そうくるか。。。

と、まあ、なかなか多彩な作品が出揃っていた。

しかし、記事やタイトルの横に「PG12」「R15+」「R18」と表記されていて、最初は面白い映画の評価基準かと思ってたんだけど、あれは年齢規制なのね。

面白そうだと思う映画に限って、この規制がしっかり入っているってことは、酒や煙草と一緒で、オモロいもんは大人だけで楽しもうってことなのか?

映画もそういうものに成り下がってしまったんだな。

悲しい。