胸の前で手をだらんと下げて「オバケだじょ~!」
頭の両脇で人差し指を立て「オニだじょ~!」
シャツの襟ぐりから顔だけ出して「ライオンだじょ~!」
とまあ、最近、娘はあの手この手で父を脅かそうと必死になっている。父は大袈裟に驚いたり脅えるフリをするが、その愛らしい娘の姿にいつもキュン死している。
父が怖がっていると、すぐに娘は「ワタシだよ」と言って正体を明かし、父を安心させる。
優しい子なのだ。
父は幸せだ。
朝、久々に娘が愚図らず、できていなかった家事を片付けて、滞りなく家を出られたと思ったら、電話も財布も忘れてきてしまった。
今日は妻が不在なので、会社帰りに夕飯の材料を買って帰ろうと思っていたのだが、駄目だ。
週末なので、保育園から持って帰ってくるものも多いから、買い物には寄っていられない。
いろいろと計画が狂ってくる。
こんな日に限って。まったく。
しかし、こんな時こそ腕の見せどころである。皆さんに、お見せできないのが残念だ。
ヘアサロンへ行くとカット台の前に雑誌が用意されているものだが、こないだは「MEN'S CLUB」と「MEN'S Ex」と「東京カレンダー」が置かれていた。
いずれもラグジュアリー系オジサマ誌である。
とうとう私もこんな雑誌を勧められるようになってしまったか、なんて、感傷に浸りながらも、頁をぱらぱら捲っていると、ある雑誌に「装いのツメはテク&メンテにあり」という特集があって、なんだこれ? ネタなのか? と思って読み進めてみると、大真面目かつ懇切丁寧に爪の手入れが解説されていていた。
う~む。
こんなことにまで気を遣わなくてはならないラグジュアリー系オジサマも大変だなと同情しつつも、あまりにも無様で見苦しいので途中で読むのをやめてしまった。
やっぱ、あれだ、こういう時の暇つぶしは週刊誌が一番だな。俺は週刊誌が良い。
今年の年始に従弟夫婦からマヌカハニーという蜂蜜を貰った。ニュージーランドに自生するマヌカの花から採れるちょっとスペシャルな蜂蜜だそうだ。
従弟夫婦のところは、毎朝、このマヌカハニーを子どもにひと舐めさせ始めるようになってから風邪をひかなくなったそうで、保育園に通い始めてから月に一度は風邪をひく我が娘の苦労話を従弟が覚えていてくれて、物は試しにと、わざわざ送ってくれたのだった。
それからというもの、半信半疑ながら、毎朝、娘に舐めさせ始め、そろそろ半年になるが、驚くべきことに娘はただの一度も風邪をひいていない。
去年1年間、娘の風邪による有給休暇取得が、私だけでも27日にもなるが、今年は今のところゼロである。
これがマヌカの
ありがたいことではあるのだが、正直、畏ろしくもある。
今年の四月半ばぐらいにFacebook社CEOのザック君が、アメリカ上院の公聴会に呼ばれた一連の騒動を覚えているだろうか? あの騒動以降ぐらいから、Facebookのタイムラインが異様につまらなくなったと感じるのは、私だけだろうか?
「おすすめの投稿」や「おすすめのページ」なる広告がタイムラインを占拠し、知り合いの投稿がうまく表示されなくなってしまった。
そんな影響からか、Facebookへの投稿そのものが激減し、Facebookを離れていった人の多くはInstagram(Facebook傘下だが…)などに流れてしまったのだろう。
私はというと、Instagramはスマホが無いと投稿できないので諦め、今はTwitterを活用するようになっている。
まあ、廃り流行りもあるだろうし、言ってしまえば、たかがSNSのことではあるのだが、個人的にFacebookはけっこう使いやすくて好きだったんだけどな。
Facebookはもう駄目かしら。
ここ数ヶ月、我が家は家族で一緒に風呂に入っている。
家族で風呂というと、ごく当たり前のような感じもするが、けっこう難しいことなのである。
家族一緒にできることの中でも、食事や団欒やお出掛けや旅行なんかに比べて、風呂というのは、家族全員の時間を合わせることはもちろん、風呂の大きさ、家族の大きさ、家族の人数、子どもの年齢、夫婦の仲の良さ、家族の仲の良さ、事前の準備、等々、諸々の条件が揃わないと実現不能な難易度の高いイベントなのである。
もちろん、我が家だって今の条件が少しでも崩れれば、すぐに消し飛んでしまう、奇跡のようなバスタイムなのである。
娘が産まれてからよく考えるのだけど、家族で一緒にいられる時間というのは、思っているほど当たり前にあるものではなく、ごく僅かで、限りがあり、ものすごく貴重なものなのであるし、一生で体験できる意味のある時間の中でも、最も幸福な時間と言っても良い。
だから、ちょっと無理をしてでも、そんな時間を大切にしたいのだ。
なんせ、早くも「とと(父ちゃん)いらない」とか「とと(父ちゃん)くさい」などと、娘から言われ始めているのだ。
父には時間が無いぞ!!
東南アジアのナイトマーケットさながら、毎晩のように、我が家には屋台が出る。
居間の片隅だったり、洗面室の乾燥機の横だったり、台所のゴミ箱の奥だったりと、神出鬼没だ。
メニューは「カレー」と「ナン」と「せんべい」が多い。たまに「うどん」もラインナップ加わるが「カレーうどん」は出してくれない。値段はどれも五百円だ。
「ナン」や「せんべい」は裏も表も丁寧に焼いてくれるので時間がかかるのだが、焼き上がっても冷ましてからでないと渡してくれないので、更に時間がかかる。「カレー」や「うどん」はこぼれないよう慎重によそうので、これも時間がかかる。
娘の屋台は大胆かつ丁寧なのである。
この屋台の客は主に私、というか、私の為だけに開かれる屋台である。私が買いに行くまで、娘はずっと「らっしゃいせぇ」「いからでしかぁ」と健気に客(私)の呼び込みをしている。
呼び込みが始まっても、しばらくは意地悪して買いに行かずにいるのだが、だんだんいじらしくなってしまい、最終的には買いに行ってしまう。
案外、娘は商売上手なのかもしれないな。
去年、娘が保育園に通いはじめ、妻が職場復帰してから、私は定時あがりを職場で保障してもらっている。
とてもありがたいことである。
残業ができないことで、仕事の割り振りも定期的で反復的な内容のものを多く受け持つようになり、やり甲斐や刺激や手応えといった面では物足りなくないこともないが、娘はあと数年であっという間に成長してしまい、私はまだまだウンザリするほど働かなくてはならず、むしろ、今は娘の成長こそ刺激的であったりもするのだから、この状態がベストかなと思っている。
しかし、だからと言って、理想通りに簡単に流れる仕事なんて少なく、先日などは、とても素晴らしい素材を前に、これはもう少し時間を掛けて丁寧に練りたいな、なんて案件が私の手元に流れてきて、無理を言って時間を確保してもらい、なんとか仕上げることはできたのだが、仕事面でも育児面でも危うい綱渡りだったので、現実はなかなか難しいものなのである。
でも、ちょっと刺激的な仕事をやり遂げた後というのは、仕事帰りに冷えた生ビールを飲みに行きたくもなるものだが、今日も今日とて、保育園のお迎えなのでした。
娘よ。すぐに行くからな。
先月の末頃に「もうこれ以上暑くならなくていいからな!」と神に祈ったのにもかかわらず、何なんだこの暑さは!!
俺の信心が足りないからなのか!? 何なんだ!!
ということで、そんな暑さと、もの凄い眩しさの中、ちょっと所用で職場の近所をウロウロしていたら、倉庫街の一角に優雅で洒落たショップ兼ギャラリー兼スタジオ兼カフェスペースを見つけた。
う~む。 こんな近くにこんなものが。 知らなかった。
それもそのはず、既存の倉庫を改造し、最近オープンした店だそうで、今流行りの「コンプレックス・スペース」なのだそうだそうだそうだ。
う~む。 コンプレックス。 俺が。
しかし、こんな辺鄙なところによくもまあ、とも思うのだが、都心では(一応ここも都心の端だが)絶対に不可能な贅沢で大胆な空間の使い方が素晴らしい、とても魅力的なスポットなので、ここだけを目指して来ても充分に満足な空間なのであるのであるのである。
あっ! またコンプレックス!
職場近くにこんな素敵なスペースができたからには、せっかくなので、これから足繁く サボりに ランチやカフェに来よう。
この場所は誰にも教えないんだからね!
今日も今日とて、仕事である。
う~む。 土曜日だぞ。
仕方ないので、僅かながらのモチベーションアップのため、早速、件のお洒落複合空間(おじさんの秘密の花園)のカフェスペースでランチをすることにした。
自分へのせめてものご褒美だ。
すると、奇遇にも大学時代の友人カップル(旦那さんとは共演の仲である)が、お子さんを連れて遊びに来ていたのであった。
う~む。 すごい偶然だ。
友人(奥さん)とは妊娠中に一度だけ会ったきりで、お子さんには会えていなかったが、SNSに日々アップされるお子さんの姿を見ていたせいか、フォローしている憧れの有名人に出会ったような気分になってしまい、ちょっとテンションが上ってしまった。
う~む。 恥ずかしい。
おかげで、とても楽しい昼のひと時を過ごすことができ、その後の仕事も順調かつ早めに終わった。
さあ、俺も早く帰って娘と遊ぶぞ!