vol. 004
The nation did not collapse 執念深い国の話 [mar. 2023]

病気療養で休職してから4ヶ月ほどが経過していたその日。

週に一度の通院以外には特にやることもないので、午前中は近所に長めの散歩に出て、そのついでに昼食の食材を買い、レンタルビデオ店で映画を借りて帰ってくることを日課にしていた。
昼食の準備をして、テレビで「笑っていいとも」を流しながら昼食を食べ終えると、午後は借りてきた映画をゆっくりじっくり鑑賞した。

病気のせいで細かなことに集中することが難しく、読書よりは映画が良い暇つぶしになった。
単調で平穏で緩慢な療養の日々は、一見すると幸福そうなようでいて、先行きがまったく見えないまま、時間だけが残酷に過ぎてゆく。

このまま自分はどうなってしまうのだろう。
その日の朝、庭で鳩が死んでいた。
2011年3月11日(金)14時46分。三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmを震源とするマグニチュード9.0の地震が発生。

津波の映像。公共広告機構。原発爆発。
23区でも最大震度5強の揺れを感じた。
悪夢のような事態を目の前にしながらも、自分の療養が終わる前に、この国の方が先に終わってしまうのかと思うと、少し安堵した。
週が明けた3日後の2011年3月14日(月)。日課の散歩に出かけると、世の中は思ったより普通に動いていた。

政府高官が「ただちに影響はありません」と空疎な言葉を繰り返しているうちに、本当に何の影響も受けずにこの国は存続してしまい、今もここにある。